高校化学では「高分子化合物」の単元で、さまざまな合成繊維が登場します。今回は、そのなかの1つであるビニロンについて解説します。
ビニロンは、日本で開発された合成繊維であり、共通テストでもたびたび出題されるテーマです。実際に2025年の共通テスト(化学)大問4では、ビニロンの合成過程に関する問題が出題されました。
ビニロンの合成は、次のような流れで進みます。
アセチレン → 酢酸ビニル → ポリ酢酸ビニル → ポリビニルアルコール → ビニロン
この記事では、この反応の流れと構造式を、高校化学レベルでわかりやすく解説します。
ビニロンとは何か

ビニロンは、1930年代に日本で開発された合成繊維です。当時の日本では天然繊維の不足が問題となっており、それを補うために開発されたのがビニロンです。
ビニロンの特徴は次の通りです。
主な特徴
- 摩耗に強い
- 耐薬品性が高い
- 吸湿性がある
- 丈夫で劣化しにくい
このため、次のような用途に利用されています。
主な用途
- 漁網
- ロープ
- 作業服
- 防水シート
ビニロンの原料:アセチレン
ビニロンの原料はアセチレン(C₂H₂)です。
アセチレンは炭素同士が三重結合で結ばれた炭化水素で、次の構造をもっています。
H−C≡C−H
アセチレンは化学反応性が高く、さまざまな有機化合物の原料になります。
ビニロン合成では、このアセチレンから酢酸ビニルを作るところから始まります。
アセチレンから酢酸ビニルができる
アセチレンに酢酸を反応させると、酢酸ビニルが生成します。
酢酸ビニルは、次のような構造を持つ化合物です。
CH2=CH−OCOCH3
この分子には炭素の二重結合(C=C)があります。
この二重結合は重合反応を起こしやすいため、ここから高分子化合物を作ることができます。
酢酸ビニルの付加重合
酢酸ビニルは、二重結合を利用して付加重合を起こします。
付加重合とは、二重結合が開いて分子同士が連結し、長い鎖状の分子になる反応です。
酢酸ビニルが重合すると、ポリ酢酸ビニルになります。
基本単位は次のようになります。
−CH2−CH(OCOCH3)−
このように同じ構造が多数つながったものを高分子(ポリマー)と呼びます。
ポリ酢酸ビニルの加水分解(けん化)
次に行う反応が加水分解(けん化)です。
ポリ酢酸ビニルをアルカリで処理すると、酢酸エステル部分が分解されます。
その結果できるのがポリビニルアルコール(PVA)です。
基本構造は次の通りです。
−CH2−CH(OH)−
ポリビニルアルコールは水に溶けやすい高分子という特徴があります。
しかし、このままでは繊維としては使いにくいので、さらに化学反応を行います。
アセタール化でビニロンができる
ポリビニルアルコールにホルムアルデヒドを反応させると、アセタール化反応が起こります。
アセタール化によって、分子同士が橋のようにつながる構造になります。
その結果できる高分子がビニロンです。
この反応によって分子構造が安定し、水に溶けにくい丈夫な繊維になります。
ビニロンの構造式
ビニロンの基本構造は、ポリビニルアルコールがアセタール化した構造です。
簡略化すると、次のような構造になります。
−CH2−CH−O−CH2−O−CH−
この構造では分子同士が結びつくため、次の特徴が生まれます。
ビニロンの性質
- 水に溶けにくい
- 強度が高い
- 摩耗に強い
- 耐薬品性がある
まとめ
ビニロンは、日本で開発された重要な合成繊維です。合成の流れを整理すると次のようになります。
ビニロン合成の流れ
アセチレン
↓
酢酸ビニル
↓(付加重合)
ポリ酢酸ビニル
↓(けん化)
ポリビニルアルコール
↓(アセタール化)
ビニロン
この反応の流れは、共通テストや大学入試でもよく問われます。
特に重要なのは
- 付加重合
- けん化
- アセタール化
の3つの反応です。
高分子化学では、「原料 → 重合 → 化学反応 → 繊維」という流れを理解しておくことが大切です。