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高校化学で学ぶ化学繊維-再生繊維・合成繊維・半合成繊維をわかりやすく解説!

目次

化学繊維とは?|天然繊維との違いをまず確認しよう

化学繊維は、化学的な処理によって人工的に作られる繊維のことです。衣服、カーテン、カーペット、さらには自動車部品まで、私たちの生活のあらゆる場面で使われています。
まずは、天然繊維と化学繊維の違いをしっかりと理解することが大切です。


天然繊維と化学繊維のちがい

天然繊維は、自然界に存在する植物や動物から得られる繊維です。たとえば、

  • 植物由来:綿(コットン)、麻(リネン)など
  • 動物由来:羊毛(ウール)、絹(シルク)など

一方で、化学繊維は次のような原料から合成されます。

  • 木材パルプなどの天然物質(再生繊維・半合成繊維)
  • 石油などの化学原料(合成繊維)

天然繊維は吸湿性や肌触りに優れていますが、しわになりやすく耐久性に欠けることも。一方、化学繊維はしわになりにくく、耐久性が高いというメリットがあります。


化学繊維は大きく3種類に分類される

高校化学では、化学繊維を次の3つに分類して学習します。

種類原料代表例
再生繊維木材パルプ(セルロース)ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン
半合成繊維セルロース+化学処理アセテート繊維
合成繊維石油由来の化学物質ナイロン、ポリエステル、アクリル繊維など

これらの分類をおさえると、それぞれの繊維の特徴や製法が理解しやすくなります。

次のセクションでは、それぞれの繊維の具体例と構造についてくわしく見ていきましょう。

再生繊維とは?|天然素材を再加工して作る繊維

再生繊維は、木材パルプなどの天然素材に化学処理をほどこして作られる繊維です。

天然の成分(主にセルロース)を一度溶かしてから、再び繊維として再生することから「再生繊維」と呼ばれます。

原料は自然由来ですが、化学的な工程を経て作られるため、天然繊維とは区別されます。

代表的な再生繊維には、ビスコースレーヨン銅アンモニアレーヨンがあります。


ビスコースレーヨン|木材パルプからできるなめらかな繊維

ビスコースレーヨンは、木材や綿花のくずから取り出したセルロースを、薬品でいったん液状に溶かし、再び細い繊維状に固めて作る繊維です。

▶ 特徴

  • 肌触りがよく、絹のような光沢がある
  • 吸湿性が高く、汗をよく吸う
  • 安価で大量生産が可能

▶ 製法の流れ(概要)

  • セルロースをアルカリで処理してアルカリセルロースに変化させる
  • 二硫化炭素(CS₂)を加えて溶解 → ビスコース溶液ができる
  • ノズルから押し出して硫酸液中で繊維状に再生

この工程により、「ビスコース法によるレーヨン」と呼ばれます。


銅アンモニアレーヨン|銅イオンとアンモニアを使った再生法

銅アンモニアレーヨン(別名:キュプラ)は、銅イオン(Cu²⁺)とアンモニア(NH₃)を使ってセルロースを溶かす特殊な方法で作られる再生繊維です。

▶ 特徴

  • とても細く、光沢があり、しなやか
  • 吸湿性・通気性にすぐれ、夏物衣料に向いている
  • 生地の落ち感が美しく、高級裏地などに使われる

▶ 製法の特徴

  • 銅アンモニア錯体(シュワイツァー試薬)にセルロースを溶かして、再生繊維として引き出す
  • この方法は化学的にはやや複雑だが、より繊細なレーヨンを作ることができる

再生繊維は、「天然由来+化学処理」という性質から、天然繊維と合成繊維の中間的な存在とも言えます。

次のセクションでは、天然由来の構造を持ちながらさらに化学処理を加える「半合成繊維」について見ていきましょう。

半合成繊維とは?|天然成分を化学的に加工した繊維

半合成繊維は、天然由来の成分(主にセルロース)に化学的な処理を加えて作られる繊維です。

原料は再生繊維と同じく植物由来のセルロースですが、そのままではなく一部を人工的に化学変化させているのが特徴です。

天然素材の性質を残しつつ、しわになりにくく、熱に強いなどの改良が加えられた繊維で、合成繊維ほど人工的でもなく、再生繊維ほど自然由来でもない中間的な存在です。

代表的な半合成繊維が「アセテート繊維」です。


アセテート繊維|酢酸とセルロースの結合でできる光沢のある繊維

アセテート繊維は、セルロースに酢酸を化学結合させて作る繊維です。

この処理によりセルロースが部分的に「アセチル化」され、アセチルセルロースという新しい物質に変化します。

▶ 特徴

  • 絹のような光沢と柔らかい風合いが特徴
  • 速乾性があり、型崩れしにくい
  • 熱によって変形しやすいため、「熱可塑性」がある(成形しやすい)

▶ 製法のポイント

  • 木材パルプからセルロースを取り出す
  • 酢酸(CH₃COOH)と反応させてアセチル基を導入
  • 得られたアセチルセルロースを溶かし、繊維として再形成

再生繊維と半合成繊維は、どちらも自然素材がベースですが、化学処理の内容によって分類が異なります。
これらの知識をおさえると、入試や模試での選択肢問題でも迷わずにすみます。

合成繊維とは?|モノマーから人工的に作る繊維

合成繊維は、石油などの化学物質をもとにして、モノマー(単量体)を人工的に重合させて作る繊維です。

再生繊維や半合成繊維と異なり、天然成分を含まないのが特徴です。化学合成によって自由に性質を調整できるため、強度、伸縮性、耐熱性、吸湿性などのバランスがとれた繊維が開発されています。

合成繊維は、重合反応の種類によって以下のように分類されます。


縮合重合による合成繊維

縮合重合では、2種類のモノマーが反応して水などの小さな分子を脱離しながらつながっていくことで高分子が生成されます。

▶ ポリアミド系:ナイロン66

  • ヘキサメチレンジアミン(NH₂-(CH₂)₆-NH₂)と
    アジピン酸(HOOC-(CH₂)₄-COOH)が縮合してできる繊維です。
  • ナイロン66」と呼ばれ、衣服、タイツ、ロープ、自動車部品などに使われます。

特徴

  • 摩耗に強く、非常に丈夫
  • 吸湿性はあまり高くないが、しなやかで使いやすい

▶ ポリエステル系:ポリエチレンテレフタラート(PET)

  • テレフタル酸(HOOC-C₆H₄-COOH)と
    エチレングリコール(HO-CH₂CH₂-OH)の縮合重合でできる高分子です。
  • 衣料用として使われるほか、ペットボトルの材料としても有名です。

特徴

  • 速乾性があり、シワになりにくい
  • 熱や光に強く、長期間使用に適する

付加重合による合成繊維

付加重合では、同じ種類のモノマーが二重結合を開いて次々とつながることで高分子が形成されます。

▶ ポリビニル系:アクリル繊維

  • アクリロニトリル(CH₂=CHCN)を付加重合してできる合成繊維です。

特徴

  • ウールに似たふんわりとした手触り
  • 軽くて保温性が高く、セーターや毛布に利用される

▶ ポリビニル系:ビニロン

  • ポリ酢酸ビニル → 加水分解 → ポリビニルアルコール → ホルマール処理という複雑な工程を経て作られます。

特徴

  • 水に強く、耐久性が高い
  • 作業着や魚網、和紙の補強材などに使用

開環重合による合成繊維

開環重合は、環状構造をもつモノマーが開いてつながることで高分子を形成する反応です。

▶ ナイロン6(ポリアミド系)

  • カプロラクタムという環状アミドを原料に、開環重合させて作られます。
  • 構造的にはナイロン66に似ていますが、製法が異なります。

特徴

  • 強くてしなやか、摩耗にも強い
  • 繊維だけでなく、機械部品やフィルムにも使われる

合成繊維のまとめ|分類と特徴を図で整理しよう

分類代表的な繊維重合の種類特徴
ポリアミド系ナイロン66・ナイロン6縮合・開環強度が高く、しなやか
ポリエステル系PET縮合速乾性、耐久性にすぐれる
ポリビニル系アクリル繊維、ビニロン付加保温性が高い、水に強い

化学繊維の分類まとめ|表と図でおさらい!

ここまで、化学繊維の3つの分類(再生繊維・半合成繊維・合成繊維)について学んできました。このセクションでは、重要なポイントを表や図でスッキリ整理しました。


再生繊維・半合成繊維・合成繊維の比較表

分類原料製法の特徴代表例主な用途
再生繊維木材パルプ(セルロース)化学処理でいったん溶かして再生ビスコースレーヨン、キュプラ肌着、裏地、ワンピースなど
半合成繊維セルロース+酢酸など化学反応で部分的に合成アセテートスカーフ、リボン、和装小物など
合成繊維石油由来の化学物質モノマーから完全に人工合成ナイロン、PET、アクリル繊維スポーツウェア、毛布、工業用品等

製法・原料・用途の違いを整理しよう

化学繊維の分類は、「どのような原料から作られ、どのような方法で繊維にしているか」という視点で整理すると覚えやすくなります。

  • 再生繊維:自然由来のセルロースを、いったん溶かして再び繊維にする(化学処理+再生)
  • 半合成繊維:セルロースに化学反応を加え、新たな性質を持たせる(部分的合成)
  • 合成繊維:天然由来のものは使わず、完全に人工的に化学物質を重合して作る(完全合成)
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